番外篇 大阪雑文オフ報告(1998/9/13実施)

 ※いろいろと問題もあるようなので、伏せ字にいたしました。皆さんで好きにあてはめて楽しんでください。


 まず初めにKとLが登場する。二人は電話帳をそれぞれに携えている。タウンページとハローページである。
 二人はJR大阪駅中央コンコースなどという雑踏の中、柱の前にしゃがみこんでそれを読みはじめる。これが目印であった。
 タウンページの「祈祷師」などという項目を読みふけっていると、四時少し前から参加者がぽつりぽつりと現れるのであった。そこに集結したのは、A、B、C、D、E、F、G、H、I。あたかも八犬伝か水滸伝かという趣であったと伝えられる。
 ここでまず怪現象が発生する。それは、ごみなのであった。雑踏をさけて壁際にわだかまるごみ、何とも不思議なことにそれがくるくると旋回しているのであった。あたかもドラえもんに出てきた「フウ子」が悪戯をしているようであったのだが、KとLはこの怪現象を見てはいなかった。何となればそのとき二人は頭に電話帳を載せて踊っていたのである。馬鹿かも。
 ところで、この怪現象を後に知ったKは、「それはコリオリの力だ」と主張することになる。物理学者Gの「いや、それは超伝導である」という意見を何の根拠もなく退け、コリオリの力説を言い張るのであった。やはり馬鹿かも。
 やがて時計の針は四時を回る。集合時間であるが、まだ一人現れていない男がいる。彼の名はCであった。待つこと二十分、Cは現れない。不幸なことに彼はCであった。もし彼が後藤という姓であったなら、皆は待つことにやぶさかではなかったはずである。古典的で申し訳ないが、後藤を待ちながら、である。古今東西に盛り上がりながら待っていたかもしれない。しかし彼は後藤ではなくCであった。一行は宴の場へ移動することになった。目印として働いた電話帳はここでその命を絶たれることとなる。二冊の電話帳はお払い箱とばかりに近くにあったごみ箱へ無造作に投げ込まれたのでだ。いいのか、K。これで来年まで電話帳のない人生だぞ。
 宴が催されるのは「すーぱー百番」という居酒屋である。雑踏の中、参加者がはぐれやしまいかという配慮もなく駄目幹事のLはどんどん歩いてゆく。参加者がちゃんとついてきていることを確認しながら最後尾を行くは裏幹事Fである。この時点ですでにテレビのADという職業を生かした彼の裏方魂は開花していた、と推測される。
 Kはこの行程で、Hに「いやあ。なんか参加者が男ばっかりですみませんねえ」などというささやかな配慮の言葉を口にする。それが要らぬ心配であったことが判明するのはもう少しあとのことである。
 さて、すーぱー百番である。入り口には臆面もなく「大阪雑文オフ様」と書かれた板がぶらさがっている。
 幹事の「師匠、上座へ」「ままま、兄さんも上座へ」という芸人風の乗りに促されてA、B両氏が上座へ、残りの参加者もめいめいに空いている席へ座る。ほぼ初対面の人間ばかりが集まっており、まだ酒も入っていないこともあってそれほどの盛り上がりがあるわけではない。お定まりの自己紹介、そしてどんな仕事をしている人間なのか、などということを順繰りに話してゆく。
 しばらくすると、L幹事の携帯電話に連絡が入り、しばしあってC登場。待ち合わせを三十分間違えていたのだそうだ。
 そうこうする内にDに近々世継ぎが誕生するということが判明、みんなで名前を考えようということに。これまた一人ひとりが順に名前の候補をあげてゆくのだが、自分の番になったHが「ええー。○○子、わかんなーい」などと口にする。○○子とはHの名であり、一人称に自分の名を使っておるのであった。
 ふざけていると言えばこれほどふざけた言い方もないのだが、「かわいーから、許ーす」という何だかよく判らない理由でパスを認められる。Hはこれより前の時点で「Aさんの写真を壁紙にしてるんです」という人知を超えた発言もしており、参加者がこの時点でHの異様な乗りに気づいておれば、この後の暴走を未然に回避できたかも知れぬ。
 Dと言えば、一部には「牛丼教の開祖」として知られておる人間であるが、Aはこれに固執し、世継ぎを「牛丼」と名づけよ、と頑強に主張するのであった。きかん坊のオヤジのようだ。そのあまりの勢いに押されて人の良いDは断ることもできず「考えておきます」などと気弱な返答をするのみ。悪いことは言わぬ。そんな名前はやめておかれよ。
 一次会の報告はこのあたりで筆を擱くことにするが、最後に、Fの、誰かのグラスが干されそうになるとすかさず追加注文する、トイレに立つ振りでメニューを貰ってくる、などの裏幹事としての冴え渡る行動を記しておきたい。その間駄目幹事Lが、自分では面白いと思っている、だがしかし下らないことを、ぶつぶつと呟いているだけだったことも心にとどめたい。
 二次会は河岸を変えて、何やら若者むけの居酒屋。店内に滝があったりペンギンの地蔵があったりという謎めく空間である。エッシャーの騙し絵のような不思議な構造を上がり下がりして団体用個室に到着。部屋の壁には幅奥行き畳一畳分高さ数十センチほどの窪みがあり、これはこのあとすぐ必然的理由からBによって「反省房」と命名される。
 さて、記録者はとうとうHの暴走に言及せねばならなくなった。一次会でも結構アルコールを摂取していたH、席につくやいなやアーリータイムスのロックを飲み干すと、「○○子、かわいーでしょー」「Aさん大好きー」などという発言を繰り返す。この「○○子」という一人称が、一人称に自分の名前を用いる女子の人が許せぬKの逆鱗に触れ、Kは「おんどれ、そこ入っとけ」と怒鳴ることになる。そこ、とはB命名の「反省房」である。
 Lの携帯電話が鳴り、今度はJが登場。しかし、Hの暴走状態にやや引いている模様。もう誰もHを止められない。ノーワン・キャン・ストップ・ハー。Hは正面に座ったKに足を投げ出し、「ねーねー、ここに足置いていい」と訊く。付き合っている女子の人にはとことん甘いが、そうではない女子の人にはとことん厳しいKは反省房入り二十分をHに命じる。が、Hは聞いちゃいない。
 HはAにべっとりである。手なんか触ってたりする。AはAでにこたらにこたらでれでれでれと笑い顔になっている。鼻の下が一尺くらいは間延びしている。「○○子、ナイスバディーなのー。ボンッ、キュッ、ボンッなのー」という発言に「口で言うだけじゃわかんないから、君、実証しなさい。私は実証主義者なんだから。ね、ね、実証してみなさい」と嬉しそうにオヤジ発言をするAであった。どういう実証を期待していたのであろうか。
 DがKからバンドの二次予選入場チケットを受け取ると、Hが「あたしもほしいー」。
 渋っていたKであるが、とうとう折れて一枚をHに差し出す。「君のために歌うよ」というのも忘れない。だが、Kは嘘をつくときいつもそうするように目は逸らしている。そもそもKはドラムなんだってば。歌わねえよ。
 最初に書いたKの「コリオリの力」説はこのあたりで登場する。Bも「その通り。だから南半球では逆まわりになるのだ」と賛同するのであったが、彼ら二人は何を根拠にそんなことを言うのか。
 そうこうしている間にもH暴走Aめろめろ状態は続く。Hが席を外している間にKが「誰かあいつ止めろ。誰かあいつの電池抜いたれ」と叫んだことも書き留めておこう。
 店員が入ってきて「当店お勧めのジャンボ・パフェはいかがですか」と言う。面白いから取れ、ということになる。届いたパヘーには花火が突き刺さっており、Iの席の前に置いたそれに店員が火をつける。ぱちぱちぱち。火がはぜる。熱くないか、新婚さんのI。大丈夫か、新婚さんのI。煙がもくもくもくと発生し、やがて火災報知器が鳴り出す。店員が何やら慌てている。それなら花火なんかつけるなよ。そしてじりじりじりという警報を物ともせずにジャンボ・パヘーを頬張る甘党の物理学者G、バトンタッチして頬張るIの姿があった。
 さて、ここまでじっと雌伏していたE、いきなり語り出す。「あのね。ぼくっすね、思うんすけどね。やっぱ、DNAなんっすよ。そのね、DNAがね。ぐるぐるってね、してるんですよ。DNAなんっすよ、やっぱ」
 ちょっとよく判らないことになっているが、いちばん判っていなかったのは喋っているE自身であったろう。
 そんなこんなで二次会お開き。AとHはまだいちゃらいちゃらといちゃついておる。こともあろうに、ぷりくら、などというものを撮影したりなんかしておる。KはAに聞こえぬ声で他の参加者に「よし、次の雑文の題名は『A氏、御乱心』です」などと言っておる。現像からあがったぷりくらをHは参加者の持つ携帯電話にべたべた貼ってゆく。そこにはHと、にへらにへらした顔のAが写っている。それから
 あっ。ちょっと待て。君たちはいったい誰なんだ。どこから入ってきた。何だなんだ何だ。俺をどうしようというのだ。こら。痛てて。こら、乱暴はよせ。乱暴は。待てまて待て。俺は記録者に過ぎぬのだ。わっ。刃物はいけません。刃物は。待て。待ってくれ。まだ書き残したことがあるのだ。まだ書き残したこ


 ※この文章は事実を基にした虚構です。登場人物は実在の人間とは一切関係がありません。もし実在の人物に著しい類似点が見られた場合、それは実在の人物の責任であり、記録者はその責任を負うものではありません。断じてないのであります。ないったら、ない。

 ※人名とアルファベットの対応等、文章についてのお問い合わせには一切お答えできません。ええ、できませんともそんなこと。口が裂けたって。

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1998.9.13
文責:keith中村
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