第9回 料金滞納


 ダメ人間などと自称しているが、ぜんたいどの程度駄目なのかと疑問に思われる方もあろう。自己紹介の写真は格好いいし、書いている内容も知的だし、ああ素敵なんて密かに焦がれている女性ファンもあろうかと思う。どのへんが駄目かというと、こういうふうに自意識過剰に誰もそんなことを思ってやしないことを書くのもそうなのだが、実はそろそろ電気が止まるのだ。
 これまでもいろいろと滞納はしてきたが、電気というのは初体験である。
 わたしがいちばんよく滞納するのは電話料金である。NTTは非情だ。予告してきたその日の朝九時営業開始と同時に止める。学生の頃はひと月の間に止まっている期間の方が長いということもあった。最近ではさすがに慣れてきたので止まる前日にかろうじて支払いをすませるという綱渡りをしている。窓口ではまず氏名と電話番号を書かされる。書かされるもなにもわたしが請求書をなくしているから再発行してもらうだけの話なのだが、とにかく、局員のお姉さんはあやしげなXウィンドウだかオープンウィンだかの端末に向かってなにやらかちゃかちゃと打ちこんだあと、「はああ。二箇月分ありますねえ。いかがなさいますかあ」。わたしは少し口ごもりながら「じゃあ、とりあえずひと月分」などという。何がとりあえずだ、居酒屋でビール頼んでるんじゃねえぞ、などと自分に心中で突っ込みながらなのであるが、恐らく窓口のお姉さんも心の中でそう突っ込んでいるはずだ。最近ではすっかり顔を覚えられて、「ひと月分ですね」などと言われるのがなかなか辛い。
 某信販会社の返済を踏み倒したこともある。これも学生時代だ。悪意でもって払わぬわけではないのだが、ないものはないのだ。督促の電話も督促の留守番電話もことごとく無視していると、矛先が保証人であるところの親に向いた。信販会社から田舎に督促の電話が入ったのだ。保証人であるところのあなたが払いなさいということらしい。ところが父はこの電話を一蹴した。そんなもん知らんわいと。さすがはわたしの親である。ところが信販会社も黙ってはいない。何度も電話をかけ、終いには怖いお兄哥さんが「あんたの息子の一生無茶苦茶にしたろか」などと言ったらしい。しかたなしに父が返済した。さすがはわたしの親である。それ以来わたしはその信販会社は怖いので要注意というふうに思っている。まあ、どこの信販会社だって同じだろうし、要注意ったって借りなきゃならんときは借りるのであるが。
 ガスが初めて止まった時は人違いであった。ある日突然ガスが出なくなった。工事中で止まっているのかと思いマンションの掲示板を見るも、それらしき貼り紙はない。ガス会社に電話して、見にきてもらったのだが、メーターボックスを点検した係員が明るく言った。「いやあ、すみませんね。お隣りと間違えて止めちゃってました」。おいおい。明るくいうことか、それが。係員は「学生さんですか」などと若く見てくれたので、まあ、許すことにしたが。二度目は自分の責任において止まった。立派に滞納して止めた。
 そして今回は電気である。夏の間にクーラーをがんがんつけていたのが仇となって、その結果かなりいいビデオボードが一枚買えるくらいの金額になってしまった。何でもAT互換機の部品代に還元して考えるのはよくない癖だな。
 電気が止まるとなかなか困る。T−REXのマーク・ボランはかつて「電気の武者」などと言われたが、わたしの部屋は「電気の城」である。なにしろコンピュータだけで七、八台が常に稼働しているのである。いちど、わたしの住んでいる部屋番号を知らぬ友人が訪ねてきた折り、あやまたずにわが部屋の扉をノックしてこういったものだ。「いやあ、こんだけ電気のメーターがぐるんぐるん回っている部屋、他にないから一発でわかったよ」
 ともかく電気が止まるのだけはまずい。だいいち、真っ暗だと怖いではないか。
 というわけでわたしは今から三万五千円握り締めてローソンにいこうかと思うのだよ。(あめゆじゅとてちてけんじゃ)


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1997/10/29
文責:keith中村
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