第88回 ひとつ違いで大違い


 以前から、部屋にいるときはずっとコンピュータに向かっているという生活だったのではあるが、システム管理という仕事に変わって以来仕事場でもずっと端末に向かっておるわけで、すなわち食事睡眠カレーという生命維持に必要最小限の活動をやっているとき以外はコンピュータに接していることになる。こんなことではいかんっアクティブにアウトドアだっと思い立ち休日に外出したのだが、気がつくと日本橋にいた。恐ろしいことだ。恐ろしげなり恐ろしげなりと呟きながら堺筋を散策したのであるが、帰ってきたときにはコンピュータを片手に提げておった。恐ろしいことだ。
 買ってしまったのはコンパックの古い486DXマシンである。何を今さら486マシンなのだ。
 見回せば私の部屋にあるコンピュータは二台のペンティアム機と一台のパワーPC機を除けばすべて486やら68kやらというロートルを中古で買ってきたものばかりであり、なんとなく孤児院の院長先生のようである。
「さあ、十五人目の家族だよ」とあやうく他の端末に紹介しそうになった。恐ろしいことだ。
 486DX−100MHzというスペックは今や中古相場二万円台に下落しておるが、ついこないだまで現役ばりばりのマシンであった筈だ。95などという重いOSを載せなければ充分実用になる。ということで、Linuxをインストールした。折角なので最近話題のIPマスカレードというものをやってみることにしたのだ。私などはマスカレードと聞くと、どうしても少年隊を思い出してしまうのであるが、これはISPから割り当てられたひとつしかないIPアドレスで、イントラネット内の複数台のマシンを透過的にインターネットに接続してしまうという機能である。イントラネット内にプロキシをたてれば同様のことが可能になり、実際私もこれまではそうしていたのだが、いやはやIPマスカレードには驚いた。面倒な設定は一切ないのだ。ゲートウェイをIPマスカレードが動いているルーター・マシンにして、パケットをそっちに投げてやればそのままインターネットに出てゆく。pingですら帰ってくる。感動ものだ。
 どういう原理で動いているのかはちっとも解らぬ。恐らくマシン内部でニッキやカッチャンが仮面舞踏会を開いておるのだろうと思う。素人考えではあるが、当たらずとも遠からずというところであろう。恐ろしいことだ。
 しかも、95でプロキシをたてていたときには、ダイヤルして「ぴいいぎょろぎょろぎょろ」という音が途絶えてから数十秒も「接続中」というダイアログが開いておったのだが、Linuxのpppdで接続すると、「ぴいいぎょろぎょろぎょろ」が途絶えてすぐにパケットが通るようになった。素晴らしいことだ。
 さて、それはそれとしてひとつ違うだけで大違いということは世の中に多い。麻雀ではたとえば六索と五索を見間違えただけで沖和になってしまう。恐ろしいことだ。
 もっと恐ろしいこともある。それは横浜銀行である。ひとつ違えば横浜銀蝿となる。私は想像するのだ。「さて、銀行行って金でも降ろしてくるかな」と赴いた先が横浜銀行ではなく横浜銀蝿だったりしたらどうなるのか、と。やはり受付嬢は岩井小百合なのか。哀川翔もいるのか。「今日も便器に股間を入れたら洋蘭背負ってエージェント」などと唄っているのか。恐ろしいことだ。横浜銀行の看板を見るたびに、ああ横浜銀蝿じゃなくてよかった、と胸を撫で下ろしてしまう私であった。
 だが、何ということだ。もっともっと恐ろしいものだって世の中には存在したのだ。
 以前にルーターがぶっとんだ、と書いたがそのときもちろんISPへの接続設定も消えてしまった。電話番号もなくなってしまったのだ。市内にはアクセスポイントが二つあるのだが、復旧のときテレホーダイに登録しているほうがどちらか思いだせず、「多分こっちだろう」と思った電話番号にそれ以後は接続していた。先日電話代の請求書が届いた。三千九百円とある。お、結構安くで済んだな、と見直すと三万九千円なのだ。つまり私は間違えてテレホーダイ契約ではないほうに接続していたのであった。痛い。痛過ぎる。専用線以上の金額ではないか。しかも、その使用料は二月分であり、ということは来月も私は三月分としてほぼ同額の金額を請求されることになるのだ。合計約八万円である。正味の話、洒落にならない。恐ろしいことだ。とほほ。
 ということで本日はここまで。
 惜しむらくは、もう一人の名前が思い出せなかったことである。ニッキとカッチャンと、ええと。


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1998/03/31
文責:keith中村
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