第56回 東京ドーム45万1467杯分


 ものすごいことになっている。牛さんだ。牛さんなのだ。
 牛さんは、キャトル・ミューティレイションというやつで、宇宙人による侵略の恐怖を味合わせてくれた。
 牛さんは、狂牛病で脳が溶けて馬鹿になるんじゃないかと戦慄させてくれた。
 そんなふうに我々を震撼させる話題を提供し続けてくれた牛さんが世に放つ第三弾、それが「げっぷ」である。
 牛さんのげっぷによって地球温暖化が促進される。
 なんということだ。牛さんなんだよ、牛さん。それにげっぷだ。とほほ。こんなもの如きで我々の環境が危機に瀕しているらしいのだ。
 温室効果に寄与する割合は、なんといっても二酸化炭素がいちばん大きくて六十四パーセント、その次はメタンで十九パーセントなのだそうだ。かのフロンとて十パーセントなのにだ。もっともフロンはオゾン層破壞という問題の方が大きいのであるが。
 さて、メタンの発生源としていちばん大きいのは、人間の農業活動であるらしい。水田からの発生とか百姓の放屁とかそういうことだろう。これが全体の二十パーセントを占める。それについで大きいのが牛さんのげっぷ及び放屁であり、なんでも十五パーセントもあるという。質量になおして、一日に全世界で四億トンである。四億トンのげっぷである。いったいどれくらいなんだ、それは。東京ドームに換算してくれないと解らぬではないか。
 してみる。
 東京ドームは124万立方メートルある。
 メタンは分子量約16である。それはいったい何だ。どういう意味だ。高校の頃に習った筈だが忘れてしまった。必死に頭をしぼったら二十二.四リットルという数字を思い出した。そうだよ。アボガドロだ。モルだ。すなわちメタン二十二.四リットルあたり十六グラムあるということだ。違うかな。合ってることにして先へ行く。
 ということは東京ドーム一杯あたり、124万掛ける1000リットル割る22.4で、約5536万モルのメタンを収納することができることになる。5536万掛ける16割る10の6乗イコール886トンのメタンである。4億割る886では45万1467となる。読んでいてもよく判らないだろう。大丈夫、書いているほうだってそうだ。
 とにかく東京ドーム45万1467杯分になるようだ。計算の間違いがないか不安だ。とくに分子量というものを取り違えているならば初手から間違えていることになる。大丈夫かな。とりあえず東京ドーム45万1467杯分なのだ。多分。
 なんということだ。牛さんはたった一日で東京ドーム45万1467杯分ものげっぷや屁をしやがるのだ。
 せっかく計算したのにちっともぴんと来ない。大阪ドームでやれば良かったのかもしれない。
 いずれにせよ判ったことは「牛さんは無闇とたくさんのげっぷをする」ということだ。
 しかもメタンの温室効果は二酸化炭素の二十倍ともいう。これはもうどうしたらいいものか。
 可及的速やかに何らかの策を講じないといけない。フロンだって人類の努力でかなり削減できたのだ。
 二酸化炭素の削減のためには我々が一日に三分間息を止める時間を設ければよろしい。特に回教徒には礼拝の間息を止めてもらうことにしよう。
 そして牛さんには。
 牛さんにお願いしてげっぷを我慢してもらう、なんてどうだ。あるいは牛さんを解剖し、げっぷの発生メカニズムを研究し、それを削減するよう品種改良を加えるとか。どこかに献体してくれる牛さんはおらぬか。ドナーになってくれる牛さんだ。ドナドナだ。やれやれ。結局駄洒落なのかい。
 それにしても。私は考えるのだ。
 それにしても、豚さんの方は大丈夫なのか、豚さんは。


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1998/01/22
文責:keith中村
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