第353回 北京の秋


 ユニヴァーソー・ストゥーディオ・ジャペーンすなわちいわゆるところのUSJは、うちからかなり近いところにある。そのうち行こうとは考えているが、平日でもえらい人出だそうで、それにこの暑いさなかにひょこひょこ出掛けていって日射病でぶっ倒れるのも厭なので、のばし延ばしにしている。
 それはともかく、テレビやなんかで時々取り上げられているようにUSJ近隣の商店街では、波及効果で売上げが伸びることを期待して、便乗商法というのかハリウッド映画にちなんだイメージチェンジを図っている。はたしてUSJで遊んできた人がわざわざ地元の商店街に立ち寄るのかというとこれはちょっと疑問なのだが、とにかくそういう事態になっていて、ご多分に洩れずうちの近所の商店街もこの御利益にあやかろうとしているのであった。
 もともとこの商店街は「バファロード」と言った。大阪ドームから程近いところにあるので近鉄バファローズと「道」から作ったちょっとどうかと思う名前である。まあしかし、バファロードくらいはまだましな方で、商店街の中央付近に設置されている、催しやなんかを伝える掲示板、この名が「板・デ・ネット」である。板に貼り出して知らせるだけに「板でネット」。おそらくインターネットをもじっているのだろうとは思うが、ここまで原形を留めていないと、そう断言する自信すらなくなってくる。
 いずれにせよ、どうしようもなく命名の鋭敏さに欠けるこの商店街が、USJ便乗を決め込んだ。
 まず、商店街の名がバファロードから「スターモール」へと変更された。
 スターモール。
 これだけでは何のことやらさっぱり判らないのだが、商店街のいたるところに貼ってあるポスターには、宇宙を背景に「STAR MALL」という文字が遠近法で奥へ遠ざかっていくロゴが描かれている。なるほど、スターウォーズか。
 ウォーズ。
 モール。
「ー」だけじゃないか。
 英語で綴ってもやっぱり一字しか合っていない。
 そもそもスターウォーズはユニバーサルではなく20世紀フォックスだろうが、おそらくそういう細かいことには拘っていないのだろう。
 それぞれの店も、それぞれに便乗の惹句を軒先へ掲げだした。
「サメてもおいしい」
 これはたこ焼屋にあったものだ。実際には「ジョーズ」公開当時の例の上を向いている鮫に似せた絵にフキダシが描いてあり、鮫がたこ焼を喰いながら言っている仕組みになっている。冷めてたらいかんのじゃないか、たこ焼は。
「タベテミーナー」
 これは、お好み焼き屋。「板でネット」に匹敵する遠さである。手書きのポップに投げやりな字でたったこれだけしか書いてないのに、原典が何か判ってしまう自分が悲しい。
 同じお好み焼き屋がハンバーガーも売り始めたのだが、これが香辛料たっぷりの辛いやつで、名前はこうだ。
「バック・ドナルド」
 辛い→炎→バック・ドラフトということだろうが、ハンバーガーという言葉の片鱗もない。もしかしたらここの店主は「ホチキス」のように、「マクドナルド」を「ハンバーガー」の意味だと思っているのかもしれない。さらには、何を思ったか、かなりデッサンの狂った家鴨の絵も添えてあり、ディズニー方面からも苦情が来そうで、何重にもやばいことになっている。
 小さなスーパーの店先にワゴンが出ていて、パック詰めの散らし寿司を売っていたのだが、これも随分なことになっていた。
「ちらしっくパック」
 どこの店も発想は同じのようで、有名な映画はものすごいことになっている。
 本屋「ブック・トゥ・ザ・フューチャー」
 家具屋「家具・トゥ・ザ・フューチャー」
 呉服屋「呉服・トゥ・ザ・フューチャー」
 お茶屋「バック・トゥ・ザ・オチャ」
 お前ら、意味考えずにもじっているだろ。いっぺん脳天に落雷させたろか。
 大阪の便乗商法というのはとりあえず駄洒落しかないのか。
 オリンピックが来たら、またとんでもない便乗駄洒落が街を埋めたことだろう。落選して良かったのかもしれない。
 便乗の夏。日本の夏。


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2001/07/15
文責:keith中村
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