第331回 ダウンサイジング


 すでに死語になったが、ネオダマという流行語があった。いや、もしかしたら流行語ですらなかったのかもしれないが、とにかくそういう言葉があった。
 ネオダマは、ネットワーキング、オープンシステム、ダウンサイジング、マイケル・ジャクソンの頭文字を取ったもので、(語ができた当時の)これからのコンピュータのあり方を表した言葉であった。現在この言葉を耳にしなくなったのは、すでにこれらが当たり前のものとなっているからで、現にこの文章のように埒もないものですらネットワークに乗っているわけだし、オープンシステムということになれば、そもそも我々個人が触れるコンピュータはもとよりオープンシステムであったわけだが、今や企業の基幹システムですら多くがオープン系に移行している。ダウンサイジングというのは、メインフレームがワークステーション(この言葉すらそろそろ死語か)にとって替わられた例を考えると判りやすいが、パーソナルコンピュータの大きさは以前と比べてそんなに小さくなったわけでもない。ただし、同じ大きさであっても集積度は飛躍的に向上しているわけで、これもダウンサイジングである。また、マイケル・ジャクソンというのは、バブルス君(この言葉すらそろそろ死語か)がかつてプリンスの名で知られたアーティストから超能力で呪われた例を考えると判りやすいかもしれない。
 さて、ネオダマの四つのうち、ネットワーキング、オープンシステム、マイケル・ジャクソンはなかなかコンピュータ以外の分野に応用しにくいものであるようで、「インターネット冷蔵庫」などという例外こそあったが、「オープン系スプーン」とか「マイケル・ジャクソン対応美白化粧品」などが製品化されたという話は寡聞にして聞いたことがない。
 だが、ダウンサイジングだけは他分野にも応用しやすい概念であるため、いろいろな製品がダウンサイジングされている。もっともダウンサイジングなどという新しい概念ができる以前からさまざまなものは次第に小型化されてきたわけでもあり、これはラジオなどの例に顕著である。ただし、しばらく以前から流行している小型ギターなどはダウンサイジングという語の流行と関わりがあるのではないかとも思える。
 特に日本ではその住宅事情からダウンサイジングの要求は高いと言え、現に私の周りでも移動目的ではなく設置場所がないという理由でノートパソコンを購入するものが少なくない。
 私は、ダウンサイジングにはまだまだ可能性があると考える。もっとさまざまな業種においてダウンサイジングが実現される可能性が残されていると思うのだ。
 たとえば、冷暖房器具およびその室外機。これが小型化されれば今まで以上に設置の自由度が高くなり、便利になるのではないだろうか。
 あるいは、ダウンサイジング旅行鞄。旅行に行くときに何が不便かといって旅行鞄の大きさである。あんな大きなものをごろごろ引きずりながら移動せざるを得ないことにはつくづく閉口してしまう。そこでダウンサイジング旅行鞄の登場だ。これで旅行の荷物もすっきり。何しろダウンサイジング旅行鞄は手提げ鞄並みの小ささなのだ。こりゃ便利だな。なお、今なら特別に通常サイズの旅行鞄もセットになっています。
 また、次のようなものも有用だろう。
「ダウンサイジングでぶ」
 でぶは困る。暑いと言っちゃあ汗をだらだら流し、カレーを喰っちゃあ、はふはふ言うのだ。マーフィーの法則でも指摘してあったように、でぶはなぜか仲間同士並んで歩くのだ。あまつさえでぶは見知らぬ同士であっても並んで歩くのだ。こりゃ邪魔。こりゃ迷惑。そこでダウンサイジングでぶの出番だ。これで通勤列車であろうがエレベータであろうがすっきり。今なら開いたスペースに置けるこの多目的収納ケースを併せてお付けします。
「米粒に写経する」という芸があるが、これをダウンサイジングするのはどうだろう。
 米粒にちまちま写経するのは確かにすごいが、これをもっとダウンサイジングしてしまうのだ。と言ってももともと米粒というのは非常に小さなものなので、この媒体をこれ以上小さくするのは難しい。そこで集積度を上げる方向に持って行くのだ。
「米粒にブリタニカ」
 これはものすごい。あの小さな米粒にブリタニカ百科事典の内容がすべて記載されてしまうのだ。数学だか何だかの学問で「百科事典棒」という概念があるが、これは「百科事典米」だ。こりゃ便利。こりゃナイス。海原小浜師匠も「あんた、これ一生もんやで」と絶賛である。今なら「米粒に手紙用例辞典」、「米粒にユダヤ議定書」、「米粒に死者の書」もセットにしてお求めやすいお値段でご奉仕。
「米粒にブリタニカ」は「魚からダイオキシン」とちょっと似ている。だから何だというわけでもないが。


新着順一覧 − 日付順一覧 − 前を読む − 次を読む − トップページ


2000/08/17
文責:keith中村
webmaster@sorekika.com