第300回 三百代言


 いよいよ押し詰まってきた。昨日から仕事が休みになったので、自宅のコンピュータへ二千年対応パッチでもあてようかと考えていた。紺屋の白袴で、まだ何にもやっていなかったのである。さて、それではと、思った途端、普段使っている機械がぱちんという不安気な音を発して勝手に再起動した。何だこれはと思い、眺めているとウィンドウズのデスクトップまでたどりついて、また勝手に再起動がかかる。あがってくるとまた再起動。何度も繰り返す。再起動がかかるタイミングはだんだん早くなり、そのうちウィンドウズどころかメモリチェックのあたりで再起動するようになってしまった。これではどうすることもできない。フロッピーディスクで起動しようにもその前に勝手に再起動するのだ。バイオスすら呼び出せない。このままではたいへん困るので、夜遅くまで調べたがどうしても原因が見当たらない。朝になってもう一度念入りに調べると、電源のファンが回転していないことが判った。おそらくこれが原因で、電源ユニットが動作不良になっているのだろう。
 日本橋の店何軒かに電話を掛るがやはりもう休みに入っているところが多い。しかも私の機械はATなどという古い規格のため、これに適応する電源ユニットはもうほとんど店頭から姿を消している。それでも何とか置いている店をつきとめ、買ってきて取り替えた。
 この機械は、どうも電源に祟られている。最初にとりつけた電源は、一年ほどで壊れてしまった。突然電源が入らなくなったので分解して調べてみると、フューズがとんでいたのだ。フューズを買ってくるのが億劫だったため、やや太目の金属線をフューズの代わりに取り付けてみた。電源スイッチを入れると、ばちばちばちとものすごい音火花そして煙を発して電源ユニットが焼け落ちた。まさかそんなことになるとは思っていなかったため、間近で覗き込んでいた私はのけぞったまま腰を抜かしてしまった。漫画では腰を抜かした人が「あわわわ」などと言うが、私はあれを一種記号的な表現だと思っていた。だが、このときは声が出た。
「あわわわ」
 記号でも何でもない。人はひたすらに驚愕して周章狼狽したときには本当に「あわわわ」と言ってしまうのであった。
 それで、電源ユニットを買ってきて取り替えたのだが、それから一年くらいでまた今回の障碍に見舞われてしまった。もしかしたら前回、二千年問題で世間が慌てふためくのを見て楽しもうなどと書いたので、何らかの怨念の怒りを買ってしまったのかもしれない。
 さて、今回で三百回である。思えば三百回もつまらぬ文章を書き散らしてきたことになる。
 時おり人から「どこまでが本当なのか」という質問を受ける。本当のことを書いていることもあれば、本当のことを元に話を大きくしていることもあり、まったく出鱈目のこともある。まったく出鱈目なのが、実のところいちばん多い。「本当か」と訊く人に「嘘だ」と答えると、たいていがっかりした表情になる。これは本当のことであって欲しいと期待していたのが裏切られたためであろうかと思うのだが、私にはどうして嘘なら残念だと思うのかが不思議である。私なら嘘でもいいじゃないかと考える。そもそもたとえ本当のことであっても、それを文章という形で定着させた時点ですでに虚構となっているはずで、だから、いやいやいや、止そう。こういった話はどうも青臭くなってしまうので恥ずかしいし、面倒臭い。
 とにもかくにも、嘘やら法螺やら寝言やらに三百回もお付き合いいただいた皆様に、感謝いたします。ご愛顧いただいた皆様のことを思いますと、わたくし感激のあまり胸が顫え涙が止まらなくなります。嘘ですけど。来年はいよいよ今世紀最後の年であります。二十一世紀までに千本の文章を書く所存で臨んで参りたいと思っています。やっぱり嘘ですけど。
 あれ。直ったと思ったコンピュータだけど、何だかまだ動きが少し変だな。原因は電源ファンじゃなかったのかな。それならはやいとこ原因を調べて対応しないと、固まったりディスクがとんじゃったりするといけない。固まっ


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1999/12/31
文責:keith中村
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