第265回 小松くん


「超能力いうのがありますな」
「え。あるんか、ほんまに」
「いや。あるかどうか知らんけど、まあそういう言葉があるやんか」
「ありますな」
「しかしやね、君」
「なんでっか」
「あれはおかしい」
「はあはあ。どういうところが」
「スップン曲げますやん」
「スップンて君、こてこての大阪弁やね」
「ええがな。とにかく曲げますやんか」
「はあ。スプーン曲げますなあ」
「しかしやな。なんでいっつもスップンやねん」
「といいますと」
「何か他のもん曲げてみいちうねん」
「ときどき、硬貨も曲げてるけどな」
「あかんあかん。硬貨曲げるんは犯罪やで」
「まあ、しかし超能力やさかいな」
「そしたら君は何か。超能力やったら犯罪おかしてもええちうんか。超能力やったらマリファナ決めてもええちうんか。超能力やったら銀行強盗してもええちうんか。超能力やったらスピード違反してもええちうんか」
「そんなん言うてませんがな」
「ちょっと君、何キロ出てたと思うの。いや、おまわりさん、ちゃいますねん、これ、超能力ですねん。ああ、そうか、超能力か、ほな、しやないな、まああんじょう気い付けえや。へいへい。こらっ」
「わあっ。いきなりでかい声やな。吃驚しますやんか」
「こらっ。そんなことが許されるんか。そんなんでええんか。そんなん、小松くんが許しても俺が許さんぞ」
「誰やねん、小松くんて」
「知らん」
「えええ。知らんて。君が言うたんや」
「言うても、知らん」
「えらい無責任やな」
「なにしろ超能力やさけ」
「意味通らんやんけ」
「ええねん。そんなことより問題はスップンやねん。なんでいっつもスップンやねん」
「そら、固いからちゃうか。普通の人はあんな固いもん、よう曲げんやろ。それが曲るから凄いちうことやろ」
「ほう。ほな、固かったらなんでもええんやな。ほしたら、ちんちん曲げてみろちうねん」
「君、言うてることむちゃむちゃやな」
「ちんちんをやな、スップンみたいにこするねん。ほら、こうやって」
「こら、仕草はやめちうねん」
「はあ。はあ。来ました。来てます。来てます」
「仕草はやめちうねん」
「来てます。来てますっ。はいっ。ほら」
「曲りましたか」
「こんなん出ましたけど」
「やめんかい。怒られるで、しかし」
「そやな。小松くんが怒ったら恐いからな」
「だから誰やねん、それ」
「そんな奴は知らん」
「おまえ、ほんまは阿呆やろ」
「ちゃうわい。とにかく俺が言いたいのはそういうことです。ちんちんでも曲げてみろと」
「そもそも、ちんちん固いんか、君」
「柔かい」
「柔かいんかい」
「柔らかいことにかけては日本一やで」
「何偉そうにしてんねん。こら、ポーズ決めるんは、やめ」
「ふははは」
「胸張るな」
「ほら、結べるで」
「そんなもん結ぶなちうねん」
「ふははは」
「やから、威張るなちうのに。もう、ええわ。下ネタはやめなさい」
「そしたら、上品にいこか。せなや、そしたら、たとえば春を曲げてみろちうねん」
「なんですか」
「春や」
「なんです」
「春や」
「春いうたら、季節の春か」
「せや」
「すぷりんぐ・はずかむ、の春か」
「せや」
「何やねんそれ、春を曲げるて、意味わからんわ」
「ええねん。世紀末やしな。春を曲げたらやな、これがほんまのハルマゲ」
「あああ。もう。最後まで言わんでええ。しょうむない」
「ハルマゲ親子」
「ハルマゲドンちゃうんかいっ。えええ。誰やねんそれ」
「小松くんの親戚やねん」
「だからその小松くんは誰やちうねん」
「君もしつこいなあ。さいぜんから知らんちうとるやろ」
「君と喋ってたら頭いたなるわ」
「まあ、とにかくですな。いっぺんスップン以外のもんを曲げて見ろ、ちうことですわ」
「ふむ」
「超能力者をやね、こう呼んできて、ほんでスップン以外の色んなもん用意しといて、曲げてみろ言うたるねん。たとえばフォークを曲げてみろ、とか。そしたら超能力者が言いよるんですわ。フォークは駄目です、波長が乱れる。ほう、ほなこっちの牛蒡曲げてみろ。いや、そういうのは私の主義じゃない。なんやねん、お前、主義も曲げられんやつがスップン曲げたくらいで偉そうにすんな、ちうねん。何を訳のわからないことを言っているのですか。訳わからんのはお前の方じゃ、そんな奴には、ほれ、握りっ屁じゃ、喰らえ。うわあ、臭い臭い、鼻が曲がりそうだ。わっはっは、どうや、俺の方が上手やろ、お前の鼻曲げたった。もう、私は怒りましたよ、こんな馬鹿馬鹿しいことには付きあっていられない、帰ります。待たんかい。いいや、帰ります。待たんかい。帰るったら帰る。待たんかい、……ああ、行ってしまいよった、……でもあいつなかなかやるなあ、ちゃんとスップン以外のもん曲げて帰った。と、言いますと、さっきからずっと横で聞いていた小松くんが訊ねます。え、あの人何もせんと帰ったように見えましたが、何か曲げましたか。それに答えて曰く、はい、臍曲げて帰りました。以上『超能力者』の一席でございます。どんどん」
「どんどん、て君な。あっ、こらっ、どこ行くねん。抛ったらかしかい」


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1999/10/13
文責:keith中村
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