第262回 カリスマでポン


 今週も「カリスマでポン」のお時間がやってまいりました。かつてマックス・ウェーバーは支配の三つの形態を合法的支配、伝統的支配、カリスマ的支配として分類しました。二十世紀も終わりの現代、今我々がいちばん必要としているのはカリスマの登場なのです。毎週さまざまな分野から三人のカリスマを紹介するこの番組さて今夜はいったいどんなカリスマが登場するのでしょうか。司会はわたくしトー鱒男でございます。
 ではさっそくお一人目のカリスマに登場していただきましょう。はい、どうぞ。ようこそいらっしゃいました。まずお名前は。はい、猫鮫太郎さんですね。ええと、猫鮫さんはいったい何のカリスマなのでしょうか。ふん。ふん。おおっ。カリスマ魚屋さん。みなさん、いかがですか。この猫鮫さんはカリスマ魚屋さんなのです。それではどのようにカリスマであるのか皆さんにご覧いただいきましょう。VTRスタート。はい、ここは猫鮫さんのお店「うを政」です。何の変哲もない商店街の魚屋さんですね。あっ。主婦がひとりやってきました。そしてえ、あっ、鰻を三尾ですか、注文しました。と、猫鮫さんは。あああっ。これは凄い。もう一度スローモーションでどうぞ。はい、猫鮫さんが左手で袋を持ち、そして今右手で鰻を掴んだ。鰻です。ぬるぬるしています。滑ります。鰻が手から滑った。いや、わざと滑らせた。鰻は宙を舞う。そして鰻はそのまま袋の中へ。猫鮫さんはその間に別の鰻を手に取って。はい、また。ぬるぬる。ぽん。もう一丁。ぬるぬる。ぽん。凄い凄い。鰻が滑りやすいことを逆手にとっての華麗なる袋詰め。これぞカリスマの技です。猫鮫さん、これはなんという技ですか。はい。はい。おおおっ。「フライング・イール・スペシャル」なるほど。素晴らしい。それではスタジオでこの技を再現していただきましょう。鰻登場です。はい、鰻どうぞ。今、水槽に入れられた鰻がやってきました。いち、にい、さん、三尾です。にゅるにゅるしていますが、いったいどうなることでしょう。猫鮫さん。準備は。はい。よろしいようです。えっ。何です。ほう。皆さん、お聞きになりましたか。何と猫鮫さんは今度は更に高度な技に挑戦するとのことです。ではさっそくやっていただきましょう。はい。どうぞ。ふむ。ふむ。ふむ。すっすごい。お判りでしょうか、皆さん。三尾の鰻をまるでお手玉のように扱っています。鰻が宙を踊ります。ぬるぬるです。それがくるくるです。ああっ。くるくるしています。くるくるー。くるくるー。まさにカリスマ。はい。猫鮫さん、ありがとうございます。今のは何という。はい。はい。おおおっ。「ジャグリング・ジ・イールズ」なるほどー。普通の魚屋さんではなかなかこうはいきません。はい。猫鮫さん、ありがとうございます。あちらの席についてお待ちください。
 さあ、それでは続いて第二のカリスマです。次のカリスマ、どうぞっ。はい。ようこそ。お名前は。はい。猿田紋吉さん。おお、これは可愛い。さあ、この可愛いお猿さんで皆さんもお判りのように、この猿田さんはカリスマ猿回しなのです。ではさっそくカリスマの妙技をスタジオの皆さんとともに拝見したいと思います。では、猿田さん、よろしくお願いします。はっ。ほう。おおっ。おおおっ。はいっ。ありがとございます。いやあ、吃驚しましたね。素晴らしい演技の数々でした。観客席からも思わず息を飲む音が漏れていましたが、さて猿田さん、今の技をビデオを見ながら解説お願いいたします。はい。ええと、まずここ、これですが、お猿さんが空中で三回転してますね。鮮やかな技ですが、これは何という。ふうむ。「モンキー・トルネード」なるほど。さてそれから、次に十露盤をとり出して、いやあこれは凄い。これ、お猿さんが本当に十露盤弾いてますもんね。しかも計算結果もきっちり正解。猿田さん、これは。はい。「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」というんですね。これは物凄いことですよ。そして、最後がこの技でした。お猿さんが拳で、はい、おおお、これは。二枚に重ねた瓦をいともたやすく割りました。これは、ええと、はい、「モンキー・パンチ」。はい、皆さん、改めて拍手を。はい、はい。ありがとうございます。しかし、何というかここまでくると、カリスマなのは猿田さんではなくてこっちのお猿さんではないかと。わっ。ひいい。冗談です冗談です。猿田さん。猿田さんっ。そんな恐い眼で睨まないで。はい、冗談ですってば。ははははは。ええとっ。では猿田さんに質問です。普通の猿回しとカリスマ猿回しの違いとは、ずばり何でしょうか。はい。ふむ。ふむ。ふむ。ふうむ。なるほど。「気持ち」が違うのですね。具体的に言ってそれはどういうことでしょう。ふむふむ。ふむ。猿の気持ちになりきる。なるほどねえ。そういえば猿田さん、お猿さんにそっくりですよね。ははは。わっ。ひいいいっ。冗談です冗談。猿田さんっ。そんなに歯を剥いて睨まないでください。ひいいい。すみませんすみません。冗談ですよ。ははははは。いやいや。はい、では猿田さん、ありがとうございます。あちらの席でお待ちください。
 続きまして、本日最後のカリスマです。さあ、次はいったいどんなカリスマなのでしょう。どうぞっ。はい。ようこそ。ええと、お、お名前は。ううっ。臭い。いえ、何でもありません。はい。おええ。ええと、寒川貧蔵さん。寒川さんは何のカリスマでしょう。うえっ。はい、なんと、寒川さんはカリスマ・ホームレスということですね。これは凄い。究極のカリスマと言っても過言ではないでしょう。さあ、それでは皆さんにカリスマの一日を追ったVTRをお見せいたしましょう。VTRスタート。はい。ええと、まずこれが寒川さんのお宅です。ええと、そのなんというかはあ、立派な段ボールですねえ。はあ。ええっ。普通の段ボールハウスとは違うのですか。はい。ええっ。なんと。この段ボールハウスは象が乗っても大丈夫。しかも百人乗っても大丈夫。さすが稲葉。ああ、スポンサーが違いました。すみません。いやあ、流石はカリスマのお屋敷ですねえ。カリスマの起床は、はい、現在午前五時。早起きです。起きた寒川さんは、まず朝食です。ええとやってきたのは、はい、ファミリーレストランの勝手口。ああ。鴉がいます。野良猫もいます。あっ。これは鼠ですね。残飯を漁っています。そこへ寒川さんが。これら動物を追い払って残飯にありつくのでしょうか。えっ。おおおっ。いきなり猫を掴んだ。そして。げええええ。そのまま猫にかぶりつきました。うわ。げえ。喰ってます。猫を喰っています。これは物凄い。ああああ、すごい勢いで猫を食べてしまいました。なんまいだ。なんまいだ。そして、次にああ。これはひどい。鴉の羽根を毟りとって。うげ。げえ。おえおえ。ひいい。喰っちゃった。はははは。喰っちゃった。あああ、鼠なんか一口だよ。ひでえ。うええ。これがカリスマの技なのでしょうか。さて、次のこれは、ええと。お仕事中の模様ですね。ええと、駅のごみ箱ですね。そこから、はい。週刊誌を。これを売り払って収入を得ているということですね。まず出てきました。ええと、少年ジャンプです。そしてえ、隣のごみ箱に移動して、はい、また出てきました。今度はええと。わあっ。大言海です。どうしてこんなものが駅のごみ箱に。また出てきました。あっ。サンリオ文庫です。懐かしのサンリオ文庫。これはプレミアものです。P・K・ディックの「ヴァリス」です。なぜ駅のごみ箱に。まだまだ出てきます。これは。おおおっ。エンサイクロペディア・ブリタニカです。どんどん出てきます。いったい何巻あるのでしょう。それ以前にいったいこのごみ箱はどうなっているのでしょう。四次元ごみ箱なのでしょうか。ああ、これぞカリスマの技なのでしょうか。信じられない光景です。この人は本当にカリスマ・ホームレスなのでしょうか。カリスマ超能力者の間違いではないのでしょうか。素晴らしい光景です。ああ、みなさん、吃驚しましたね。ものすごい映像でしたね。ええと、寒川さん。ちょっとご質問しますが、あなたの収入はいったいどれくらいなのでしょう。ふむ、ふむ。ええっ。年商百億。そ、それはいったいどういうことでしょう。はい。ふむふむ。ふむ。ということは本当は会社の取締役。ホームレスは趣味、ということですね。ふうむ。世の中いろいろな人がいます。なんだかすごいことです。なるほど。え。はい。段ボールハウスも本当の家ではない、と。本当の家は敷地千坪。えええ。それはすごい。はい。ふむふむ。段ボールハウスは仮の住い。はい。え。ふむ。仮の住いで、カリスマ。あああ、駄洒落です。皆さん。駄洒落です。ああっと。時間の方がやってきてしまいました。今週はここまでです。こんな駄洒落で終わっていいのでしょうか。しかし、もう時間がありません。とほほほ。それではみなさん、来週もまた、カリスマでポン。それではさようならあ。


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1999/10/07
文責:keith中村
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