第250回 論理的には一行


人が文章をもって他者に意志を伝えるのと同様電子計算機に対してはプログラミング言語を用いればいわゆるところのプログラムを生成することが可能であるのだがこのプログラミング言語をコンピュータが直接理解できるコードへ変換してくれるのがコンパイラなりインタプリタなりというツールでありこういうものがあるがゆえ我々は生の機械語コードよりはずっと人間の言語に近い記号で電子計算機上でプログラミングすることができるのだけれど実際そのプログラミング言語の仕様には二通りのものがあってそれはいわゆるフリーフォーマットであるかどうかということでフリーフォーマットというのはプログラミング言語を記述する際に最低限しか書式の制限を受けぬものでトークンという概念はまあ言語を構成する言葉のひとつの単位すなわち単語のようなものだがフリーフォーマットの言語の場合このトークンが分断されるのはまずくて一例でいくとprintfという語をprintのあとに空白をひとつ置いてからfと書くというようにしてはいけなくてだがそれ以外はまったく自由に記述してもよく途中で空白を開けようが改行しようがまったく問題ないということになっておりこのためあくまで人間の可読性を尊重した記述ができるのだが実際我々がふだん目にしている文章というのはフリーフォーマットであり人間の脳という大変すぐれたトークン解析装置はどのように記述された文章であっても理解することができるようになっていてまあ中にはどのように書いても確実に誤読してしまうという馬鹿ぼんもいるけれどそれはさておきどのように書いてもよいとはいい条やはり可読性が高いに越したことはなく弁慶がなぎなたというやつを回避すべく通常の文章では句点読点をはじめとする記号を使用することで難読誤読の可能性を低める努力がなされるところのものでさてしかしすでにお気づきのようにこの文章はそういった記号を一切使用せずに書いておるのだが今書いたようにこういう書き方は本質的には句点読点その他記号を用いたものと何ら変わりがないはずでしかしおそらくこのページを開かれた瞬間にはほとんどの方がこれは一体何だと思われたことであろうし傷つきやすい人ならばこれを自分に対する敵意と受け止めて怒りを覚えられたかもしれずもしそうならば私としては決してそんなつもりはないのですと謝罪したいところでだが実際にはそういう人はこのページを見た途端に読もうという意志を喪失しているだろうからこのような場所で謝罪しても仕方がなくむしろ一般的な判断では非常に読みにくいとされるだろうこのような文章をここまで読んでくださっている方そうたとえばあなたのような方に対してありがとうございますへえどうもどうもと感謝するほうが余程相応しいことなれど実際ここまで読んでいる人はどれくらいいるのだろうかいかに読みにくくとも内容がおもしろければ読みすすめようという気にもなろうがしかしこの文章は電子計算機の言語についてなどという退屈な書き出しからはじまり長々とどうでもよい内容を書いておるわけでここまで読みすすめている人はそれほど多くはないのではなかろうかということはこのあたりでたとえばえっさえっさえっさほいさっさお猿の駕籠屋だほいさっさなどとそこいら中を踊り回ったりしても誰にも気づかれることはなかろうしほれこのように鼻の穴をほがほがと広げて面白い顔を作っても誰にも笑われることもなかろうしあるいはララララなどと唄いはじめても大丈夫いやラララなどという文字が数十も並べばいかにこのような文章中であろうとやはり目立つのは必至だろうからそれはまずいかもしれないまずいだろうまずいかないや大丈夫ではないかなどうかなどうだろうねえやってみようかやってみようやってみませうそれがいいそれがいいと思ってしまったからやるララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララしまったやはり目立ってしまったではないか読み飛ばしていたあなたも何事かとこの付近に目を通しはじめてしまったではないかええとそのあの何でもないのですはい何でもありませんすなわち実存主義においては人間という存在の意味は存在そのものにくっついているのではなくその点が従来のキリスト教の人間観に対立するものであったわけであるいはニーチェのいう超人思想神は死んだというものもそうであるが一般に近代哲学というのは既存の世界観を覆す革命的思想あるいは危険思想であったわけだからああやっと行っちゃったよ吃驚したさすがにラララの連発は目立ち過ぎるようだところで文章の読みにくさと理解のしにくさは実は同じものではなくあるいは難解な単語難解そうな単語が並んでいから理解しにくいのだということもなく日常を見渡してみれば判ったようで実は判らない文も散見されるわけでたとえば今手元にあるコンピュータ雑誌の広告にサイボウズ全国で増殖中などという惹句が書かれているのだがサイボウズというのが全体何であるのかよくわからなければそんなものに増殖されたら堪ったものではないなあということを考えてしまい何やら時計仕掛けの僧侶がにょきにょきと地面から生えているようなイメージを想像してしまいそしてひとたび脳裡に去来したそのイメージはたとえこのサイボウズというのがソフトウェアの商標乃至は社名だと判ったあとでも拭いさることはできず常に坊主がにょきにょきという恐ろしい映像が頭にこびりついてしまうというよく判らない事態となってしまうのだがまあそんな埒もないことを書いてもさすがにこの辺りまで読みすすめている人はいないだろうと思うのでもう何を書いてもとにかくそれは詰め詰めに文字が並んでいるという情報にしか過ぎぬわけでここらで突然へんてこ刑事シリーズというのを展開しても誰も気づかないことだろうがへんてこ刑事シリーズはへんてこデカシリーズと訓みこれはテレビの刑事ドラマでよくやっている刑事の仇名を自分で考えてやろうというコーナー何がコーナーなんだか判らないがともかくそういうことでたとえば今ひとつ思い付いたのが首吊りデカそれは何だと言われても困るのだがとにかく首吊りデカなのであるがまあ読んでいる人がいないのでそれは何だなどと問われる心配もなく以下思い付くままに書き並べてみると出家デカ枕デカ頭デカ顔面デカ箪笥デカ鶏デカしりとりデカ変身デカモアイデカ宇宙デカ文化デカ古墳デカ何だか馬鹿馬鹿しくなってきたので辞めますなどとでかい声で叫んでも誰も読んではおらずということはほらほらこうやってパンツ一丁になってヒンズースクワットをしていてもまったく平気でありこのように床に仰向けに寝転がって手足を阿呆のようにばたばたさせていても誰も見る人もなく更にエスカレートしてちんちん抛りだしてがるるなどと叫んでみても大丈はっ見られた今あなた見ましたねあああ恥ずかしいところを見られてしまったエエイ口惜しやもうこうなったからにはここにとどまるわけにもいかず私は遁走してしまおうではないかそれではみなさんさようならいやだから誰も読んでないってば出家デカ


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1999/08/13
文責:keith中村
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