第240回 街頭インタビューだびゅう


「なるほどねえ。犬好きの人間と猫好きの人間ではこんなにも性格が違うもんなんですねえ。さて、それでは街の人びとの声を聞いてみましょう。実は震動さんに街角インタビューに行って貰っているのですが、ええと、震動さん震動さん。スタジオのトーです」
「はあい。トー鱒男さん、震動です。えー私は今、駅前に来ています。それではさっそく街行く人びとに質問してみましょう」
「よろしくお願いします」
「あのすみません。ちょっとよろしいでしょうか」
「はい」
「突然ですが。ペットにするなら、あなたは犬派ですか、それとも猫派ですか」
「ほほほほほ。私は印象派よ。ひまわりー。ひまわりー」
「……まずい。変な人だわ。……あー。あははは、そ、そうですか。どうもありがとうございました」
「私は踊り子よー。ひらひらー。ひらひらー」
「べ、別の方に訊いてみましょう。……あのー、すみません」
「何ですか」
「えーと。あなたは犬派、それとも猫派」
「おれはジャコバン派だあ」
「ひっ」
「ロベスピエールばんざあい。ダントンばんざあい」
「ひい。た、助けて」
「ばんざあい」
「……はあっはあっ。いったいどうなっているのでしょう。気を取り直してインタビューを続けましょう。あのー。ちょっとすみません」
「なんでしょう」
「あなたは犬派でしょうか。それとも猫派でしょうか」
「ふふふふ。俺はポル・ポト派だっ。ばばばばばばばばばっ」
「きゃあっ」
「どっかん。どっかん」
「ぎゃああっ」
「くめーる・るーじゅ・ぱーんち」
「かかかかカメラさん、しっかり。こっちよ」
「ばりばりばりばり」
「ひい。ひい。ひい。……カメラさんが肩に負傷されました。大丈夫ですか」
「震動さん、震動さん」
「はい、スタジオのトーさん」
「たいへんそうですねえ。ご苦労さまですがもうちょっとインタビューお願いします」
「ええっ。……は、はい。それでは、ええと、あそこの男性に訊いてみましょう。あのー。ちょっといいですかあ」
「はい。何でございましょう」
「あなたは犬派ええと、その。犬系ですか、猫系ですか」
「お嬢さん、銀河系には生命の住む星がいくつあるとお考えですか」
「へっ。いや、あのね。犬系か猫系かと」
「お嬢さんっ。大事なのは銀河系の話です。よろしいか。今や終末の時は近いのです。私はレティクル座からの電波によってですな、その事実を教えられまして」
「いや、あの結構です」
「今や人類の生まれ変わる時は近づいた。みんなでレティクル座に移」
「カメラさん、行きましょう。……どうもまともな人がつかまりませんが、もうお一人訊いてみましょう。あのーもしもしー」
「はいはい」
「あなたは犬系、それとも猫系ですか」
「私は複雑系です」
「はあ」
「したがって自我が現存在の本質的存在であるならばこの限定は実存論的に解釈され現存在の特定の在り方の現象的呈示の中で答えられなければならず現存在は実存しながらゼルプストであるならば自己のシュテンディヒカイトは自己の可能な非自立性と」
「あの……」
「無意識的表象はそれがすでに前意識に属している無意味な表象と結合しその表象の上へ自己の心的強度を転位し、その表象の背後に姿を隠す場合のみに作用を及ぼしうることこそが神経症における転位の事実であり、これは前意識表象自身に対して」
「何だか複雑な人でしたねえ。別の人に訊いてみましょう。あっ、そこのあなた、あなたは犬系、猫系」
「非ピリン系です」
「はいはい。もういちいち構ってられません。次行きましょう。あなたは何系ですか」
「保健係です」
「そりゃ、字が違うってば。はい、あなたは何系」
「しゅうしゅう」
「はっ」
「しゅうしゅう」
「こっ、これは。もしや」
「しゅうしゅう。私は塩素系です」
「きゃあっ。やっぱり。ひい」
「しゅうしゅう」
「うぐぐぐ。混ぜるな危険。……ばたり」
「しゅうしゅう」
「はいっ。こちらスタジオです。ええと、震動さんが倒れてしまいましたが。んー、これはどういうことなのでしょう。いったいこれは何なのでしょう。思うに作者はきっとやけ糞なのでしょう。ネタがないのでしょう。そうなんだ。ああ、きっとそうなんだ。みなさん、それではさようなら。来週までご機嫌よう」


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1999/07/06
文責:keith中村
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