第221回 魔物がいる街


 好事魔多しなどという言葉があるが、実際この世は危険がいっぱいである。新聞やテレビのニュースでも通り魔や放火魔の無差別連続犯行の話題は後を絶たない。警視庁の調べによるとこういった犯罪は現代では以前と比較すると多彩を極めているという。今回は、「平成十年度版警視庁犯罪白書」に報告されたいわゆる「何何魔」のうちからいくつか紹介したい。こうした非道な犯罪に巻き込まれぬために必要なものはまずは正確な知識であるから、みなさんもこれを読んで日頃から十分に注意をしていただきたい。

【かたぐる魔】通行人をいきなり自分の肩へ乗せて走り出す魔。特に害はない。大井川を渡るときには重宝する。

【おこさ魔】電車の中で大声で騒ぐ魔。たいていは数人で行動するのでなかなか手がつけられない。だが、ひとりのときはうって変わっておとなしいことが多い。殴るなら今だ。仲間に「なにさ魔」「わがま魔」がいる。

【けだ魔】冬場、セーターなどを着ているとよく被害にあう。テレビの通販で売っている商品で見る見る撃退できる。私もあれが欲しい。

【さくらじ魔】ときどき灰を撒きちらす魔。農作物に深刻な被害を与える。洗濯物も台なしになる。

【きのみきのま魔】ずだぼろの衣服を着用して辺りを彷徨する魔。別名を乞食あるいはホームレス、ルンペンなどと言うが、軽犯罪法の取締り対象となっている。

【おとしだ魔】晴着魔と並び正月にのみ出没する魔。気がつけば財布の中がからっぽになっているので十分気をつけよう。

【かぶなか魔】江戸時代には奨励されたこともあるが、現在では独禁法とか闇カルテルとかいう言葉で語られる事が多い魔。

【ひとだ魔】夜の墓地に出没する魔。いまだに正体がよくわかっていない。プラズマだとする人もいる。

【あん魔】いきなり人の肩を揉みしだく魔。これに遭うと健康になってしまう。なぜかテレビや新聞などのマスコミではその名が語られることがない。

【てっぽうだ魔】幹部の代わりに刑務所に入ったりすることもある。基本的には堅気の人間には無害の魔。しかし、この仲間の「ながれだ魔」は民間人にも被害を与えるので注意。

【オズ魔】宇宙にむけて電波を発射する魔。これ自身にはそれほど害はないが、その電波が自分に向って放たれたと誤解する人間を産み出すことも多く、そちらのほうが却ってたちが悪いので注意が必要。

【かにた魔】通行人にいきなりある種の中華料理を投げ付けて、おどろいた隙に財布などを強奪する魔。グリーンピースが嫌いな人は特に注意。

【くさりが魔】その名のとおり鎖鎌を振り回す魔。かなり危険なのでこれに出会ったらすぐに逃げること。しかし、よく見ると鎌の代わりに熊の縫いぐるみを回していることもあり、そういう魔は危害を加える可能性が少ないが、別の意味で危険なのでやはり逃げるにこしたことはなかろう。

【とおや魔】ふだんは飄々と遊びまわっているが、いざとなると桜吹雪の刺青を見せびらかす魔。魔といいながら実はいい奴かもしれない。

【ふゆや魔】これは非常に恐ろしい魔であるからくれぐれも気をつけてほしい。眠ると死ぬぞ。

【あた魔】これには二種類ある。いいあた魔と悪いあた魔である。悪いあた魔のほうはそりゃもう始末におえないくらい悪い。なんとかしなければいかんよ、実際。

【あおし魔】かつてわが国に無責任時代という一時代を築いたこともある魔。先頃まで東京一帯で暴れていたがシンタローという人に平定される。運悪く出逢ってしまったら「としはく、としはく、としはく」と三度唱えれば魔除けになるという。

【あおや魔】青白い顔をした魔。弁護士であったこともある。かつて「さりん」という武器で日本を恐怖のどん底に落とし込んだが、現在拘留中。

【あばれう魔】江戸時代にはよく出没したと伝えられる。最近ではめっきり減少しているが、田舎では未だにいることがあるので注意したい。

【ひょうろくだ魔】無害と言えば無害だが、害があると言えばこれほど始末におえない魔も少なくない。同類に「とん魔」がいる。

【ひとづ魔】退屈していることが多い魔。閨房の手練手管に長けているので注意が必要だが、その危険が好きという人はあえて止めない。更に強力な魔に「だんちづ魔」がいる。ああ。じゅるじゅる。はっ。いかん、取り乱してしまった。反面、貞淑な種類は「そうこうのつ魔」と呼ばれる。

【やじう魔】火事を発生させるのが放火魔であるが、その火事場に出没するのがこの魔である。比較的害は少ないが著しく通行を阻むことがあるので注意。また、この魔がいる火事場では運がよければ「ひだる魔」や「断末魔」にも遭遇できる。

【さかもとりょう魔】高知県に出没する魔。一見善人そうに見えるが、海綿体を結成したというから、きっといやらしい奴なんだろう。

【ばしゃう魔】たいへんな魔である。下手をすると過労死しかねないのでくれぐれも注意していただきたい。仲間に「きぎょうのはぐる魔」がいる。

【あつりょくが魔】この魔は富士山の頂上でも芯を残さずご飯を炊いてくれる。どうして魔なのか、いい奴じゃないか。

【どろぬ魔】もうこうなるとどうしようもない、そういう魔。あがけばあがくほど深みにはまってゆく。ほら、あなたも経験がありますよね。ね。ね。ね。

 以上、日頃から注意したい魔をいくつか紹介した。ここまで読んでいただいてお疲れさ魔。


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1999/04/23
文責:keith中村
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