第190回 今年の流行を考える


――本日は、「今年の流行を考える」ということで作家の个山靉靆先生にいろいろお聞きいたします。先生よろしくお願いいたします。さて、それでは早速ですが先生、ずばり今年はどんなものが流行するのでしょうか。
个山「そうだねえ。まずはやはり、最近はやりのインターネットとやらのブームがますます加熱するよね。これは間違いない」
――はい。
个山「しかしねえ。それは誰でも考えることだから、これだけじゃ予想でもなんでもないよね。問題なのはインターネットでどんなことが流行するかだよね」
――そうですね。何が流行するんでしょうか。
个山「じゃ、ぼくの予想を言いましょうか。って言っても、ぼくの予想、なんてのもおこがましいくらい当然の、ちゃんと分析すれば誰にでも判ることなんだけど」
――はあ。誰にでも、ですか。
个山「そう。流行は循環する、とか、流行は繰り返す、なんて言い方があるでしょ。昔流行ったものが再び流行するってやつ」
――ええ。ミニスカートの流行なんかがそうですね。
个山「そうそうそう。もうちょっと正確を期すると、流行は螺旋状に進化してゆくんだよね」
――螺旋状、ですか。
个山「うん。今あなたが言ったミニスカートだけど、昔流行したときと今とではまったく同じものではないでしょ」
――はい。同じミニスカートでもデザインやなんかは現代風に洗練されていますね。
个山「その通り。くり返しているように見えて実はひとつ進化してるんだよね。だから、ぐるぐる同じところを回っているんではなくて、繰り返すたびにひとつ上の段階に昇るのね。つまり螺旋状に進化してる」
――ああ、なるほど。判りました。で、インターネットの話ですが。
个山「うん。それでね、だからインターネットでも昔の流行が形を変えて流行するだろうってことだ」
――なるほど。で、どうなるんでしょう。
个山「ここからがぼくの予想になるんだけどね。ずばり言いましょう。それはダッコちゃんだよ」
――だ、ダッコちゃんですか。
个山「そだよ。ただね、当時と今とで違うのは、現代は差別やらなんやらというのがうるさいってことだ。だから、昔みたいに黒人を模したやつは駄目だろうね」
――はあ。ダッコちゃんは唇が分厚くて縮れ毛でしたからね。
个山「今あんなの出してごらん。各方面から袋叩きだよ。だからね、白人のダッコちゃんが流行するんだよ」
――白人のダッコちゃんですか。
个山「間違いありません」
――あの……。先生。インターネットでダッコちゃんがはやるってのは具体的にどういうことでしょうか。
个山「何よ、具体的に、って。流行るもんははやるんだ。仕方ないでしょ、ダッコちゃんがはやっても」
――はあ……。
个山「それからね、インターネットではもうひとつ、バイバイハンドがはやります」
――バイバイハンド……。
个山「知らないの。君いくつ。あったでしょ、昔。車のリアガラスに吸盤で取りつけてさ、手がばいばい、ばいばい、って振れるやつ」
――ああ、あれですか。バイバイハンドというのですか。
个山「最近の編集はものを知らんね。そんなの常識だよ」
――すみません。
个山「あれがインターネットで流行するんだね。昔のバイバイハンドは手を開いてパーの形にしてあったけど、次に流行るのはブイサイン、つまりチョキの形のやつね」
――チョキ……。
个山「そう。名前はね、チョキチョキハンドですね、こりゃ」
――チョキチョキハンド……。
个山「そのうちインターネットではみんなチョキチョキハンドを付けるようになるよ」
――インターネットで、どこにつけるんですか。
个山「何言ってるんだい。インターネットにつけるんですよ」
――インターネットにつける……。チョキチョキハンドを……。
个山「間違いありません」
――あの。ええ、ええと……。先生。失礼ですが。先生はもしかしてインターネットが何かをごぞん。
个山「何だって」
――あ、いやいやいやいや。何でもありません。はい。何でもありません。
个山「でさ、そのうちチョキチョキハンドをじいっと見てて気分が悪くなったり発作を起こしたりする子供なんかが出てきてさ、それでチョキチョキハンドは下火になるでしょうね。何の発作か知らんけどさ、口から泡ふいたりして」
――わわわっ。先生っ。とっ、ところで。
个山「何だい、いきなり大声で」
――ところで先生。ちと話を変えますが。ごほんごほん。ええと。いまや世紀末と呼ばれる時代になったわけですが、やはり世紀末的流行なんていうのも発生するのでしょうか。
个山「無論です。もうその予兆は現れてるでしょ」
――何でしょう。
个山「ペットだよ。ほら、前の世紀末には蟹を連れて散歩した芸術家やなんかいたでしょ。世紀末になると変なペットが流行りだすんだね」
――確かにいわれてみればイグアナやら蛇やらという爬虫類のペットが流行しているなんていう話もあります。
个山「爬虫類なんかはまだまだ序の口ね。これからは寄生虫をペットにするようになるよ」
――寄生虫ですか。
个山「カイチュウやギョウチュウやサナダムシを腹ん中に飼う奴とか、頭に虱飼ったり、陰毛に毛虱飼ったりする奴とかね。あとは住血吸虫ね。知ってますか」
――住血吸虫、ですか。いえ。
个山「ケルカリアってのがいるんだけどね。こいつが住んでる水なんかに入ると、人の皮膚を突き破って入ってくるんだよね。で、血管の中を通って肝臓や膀胱にたどり着いてそこで卵をうむ」
――うわ。
个山「これが痛いんだよお。血尿がでたりする。おお、痛いいたい。痛いねえ」
――あの。先生。しかしそんな危険なものをどうしてペットに。
个山「世紀末だからさ。仕方ないでしょ。他にもねえ、もっと危険な細菌やウイルスを飼う奴も出てくる」
――……。
个山「日本脳炎とか、狂犬病とか、エイズとか、エボラとか」
――先生。しかし、そんなものに感染しては死んでしまいませんか。
个山「世紀末だからいいんだよ、それで。きききききき」
――先生。
个山「流行るよお、これは。大流行するだろうねえ、間違いなく」
――先生、流行の意味が違います。
个山「いいんですよ、世紀末だから。他にも淋病で膿出す奴とか、梅毒で鼻落す奴とか」
――先生っ、話題を変え。
个山「ほげほげほげほげ」
――先生っ。どうされましたか。
个山「ほげほげほげほげ」
――あっ。先生っ。大変です。先生の鼻が、鼻が。鼻がずれてます。
个山「ほげほげほげほげ。ずるずる」
――ぎゃっ。鼻が落ちた。
个山「ふがふがふがふが」
――ああっ。どうすればいいのでしょう。まったく。まったくもって世紀末であります。無茶苦茶でございます。かなりなことになっております。それでは本日はこの辺で。皆さまさようなら。
个山「ふがふがふがふが」


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1999/01/11
文責:keith中村
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