第182回 友人代表


 ええと。はい。あのただいまご紹介にあずかりました田中と申します。ええと新郎の太郎くんとは大学時代の同級生でして。ええと。あの。本日は晴れの場にお寝間着あのねお寝間着いやもとへお寝間着頂きましてまことにありがとうございます。わたくし上がり性で人前で話すのが苦手なものでしてかなり緊張しておるのですが、あ、いや。そんなことはどうでもいいのですが。ええと。あ。そうだ。あの。太郎君花子さん本日は大変おめでとうございます。その。わたくし新郎の太郎君とは大学時代からの友人でして、それで本日はこんなことをやらされていやいやいやいやこのような場にお寝間着いただいておるわけですが。それで。あの。ええと。ええい。言っちゃえ。実はですね。わたくし、祝辞を述べるということで原稿を書いたのですが、あがっちゃいましてうっかりそれを自宅へ置き忘れてきてしまいまして。ですからこうやって喋っているのはいわばアドリブというやつで。いや、まあ、そんなことはどうでもいいのですが。それで。ええと。あっ。そうだ。そうそう。新婦の花子さんですが。わたくしお目にかかるのは本日が初めてでして、こうやって拝見いたしますとその予想よりも断然お美しい方で。いや。あの。と言いましても決して酷い風貌を予想しておったというわけではなく。いや、でもですね。太郎君とわたくしの共通の友人に山田というやつがおりまして、こやつが一度花子さんにお目にかかったことがあるのですが、山田がわたくしに申しますにはそりゃもう醜悪なご面相で、まさに人三化七などと。あわわわわ。いや。何でもありません。今のはわたくしではありません。山田です。山田なのです。山田なのでございます。わたしはそんなこと露ほども思ってはおりませぬ。こうやって拝見いたしましてもそうですねえせいぜい人五化五くらいではあろうかと。はい。そんな風に思っておるわけですが。ええと。何だか太郎君の目つきが鋭く感じます。あれ。あれ。あれ。花子さんもなんだか凄い形相でこちらを睨んでおるように感じるのはわたくしだけなのでしょうか。ああ。今の形相なら確かに人三化七と言っても過言では。あわあわあわあわ。その。あの。そうそうそうそう。話を変えましょう。変えるのです。ええと。太郎君と先ほど話に出ました山田とそれからわたくしは大学時代同じクラブに所属しておりまして。ええと。それでですね。何のクラブかと言いますと創作童謡研究会というんですが。はい。新しい童謡を作ろうではありませんか、という趣旨のクラブでして。で。で。それで。わたくしこのように口下手なものですから、当時我々が作った童謡を唄って祝辞にかえさせていただこうかと思うのですが。よろしいでしょうか。よろしいでしょうか。あ。あ。なんか太郎君があからさまにほっとした顔になったように見えますのでよろしいということに解釈して。それでは。あ。あ。カラス。あ。すみません。緊張のあまり頭が真っ白になって二小節め以降を忘れてしまいました。ええと。ちょっと待ってくださいね。思い出します。思い出しますから。カラス。カラス。ああっ。そうそうそうそう。そうですそうです。思い出しました。はい。大丈夫。大丈夫です。では。改めて。カラス、カラス、カラスの死体はなぜないの。カラスの死体は消えちゃうの。カラスの死体はどこにある。カラスの死体は山のあなたの空遠く。カラスの死体は反物質。カラスの死体は反物質。そっと探して見てごらん。ぽぴい。かあかあ。はい。以上でございます。そっと探しての部分で裏声になってしまいましたことをお詫びもうしあげます。ええと。この歌は山田が歌詞を、太郎君が曲を作ったのですが、ぽぴい、という部分の部分転調がいかにも反物質的雰囲気を醸し出しておりわたくしには大変すばらしく思え、けだし名曲であるかと。ええと。それではもう一曲唄います。今度のは、太郎君が歌詞を、わたくしが曲を作ったもので、題名をば鰻の寝床と言います。あ。あ。あ。それでは。鰻。あ。すみません。ええと、思い出します。思い出しますから。鰻うなぎ鰻。よっしゃ。ガッツポーズ。うっしゃあ。思い出しました。はい。しかと思い出しましたですよ。では。鰻、うなぎ、鰻の寝床は細長い。鰻の寝床は細長い。鰻のうなじも細長い。鰻のうなじも細長い。鰻はとってもぬるぬるしてる。そうよ、ぼくの鰻もぬるぬるなのよお。でもぼくの鰻は太くて固いのよお。しゃばだあ。しゃばだあ。お粗末でした。ええと。お判りのように後半の歌詞はメタファーとなっておりまして、その陰茎の象徴という。え。え。あ。あわあわあわ。わたくしとしましたことが何ということを口走ったのでしょう。せっかく晴れの場にお寝間着いただいたというのに。失敬を。失敬をつかまつりました。ええと。あの。じゃ、お口直しにもう一曲。これは太郎君の作った中でいちばんの名曲の誉れ高きものなのですが。題名を陽気な小人といいます。とってもメルヒェーンでございまして。そりゃもうメルヒェーンです。あ。あ。あーあーあー。では。ずんずんずびずびぴっころぷー。ずんずんずばずばぴっころぺー。小人がね、陽気な小人がプロレスしてる。陽気な小人がプロレスしてる。いまだそれゆけバックドロップ。いまだそれゆけラリアット。二番。小人がね、陽気な小人が流血してる。額の真ん中流血してる。いまだそれゆけ兇器攻撃。いまだそれゆけ場外乱闘。でもね小人は小さいからね。場外だったら見えないの。あそれ。見えないの。あほい。見えないの。ほげほげえ。ほげほげえ。ほげほげげえ。こほん。以上でございます。それでですね。このような歌を作っては幼稚園を廻って唄っておったのですが、なぜか出入り禁止を喰らうことが多くて。そんなに下手じゃないとは思うのですが。ええと。それはさておき、太郎君が結婚するということを聞いたとき、わたくし久しぶりに創作意欲が湧きましてそれで一曲ですね、歌を作りました。はい。本邦初公開でございます。よろしければここで唄わせていただこうかと。ええと。あれ。なんか太郎君の眼がまた険しいく険しいくなってるように見えますが。多分これはわたくしの気のせいでしょう。ちとワインを飲み過ぎちまいましたので。では。ぼっけぼっけぼうぼう。ぼっけぼっけぼう。僕は元気な太郎君。僕は元気な太郎君。アムウェイにのめり込んだこともある。だけど妻には内緒なのさ。洗剤売ってたこともある。だけど嫁には内緒なのさ。ぼっけぼっけぼうぼう。ぼっけぼっけぼう。はい。お粗末さまでございました。本日はこのような晴れの場にお寝間着いただきましてほんとうにありがとうございました。太郎君花子さんどうぞ末永くお幸せに。以上友人代表の田中でございました。


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1998/11/30
文責:keith中村
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