第130回 カッコをつける


 文章の中に、( )の記号で囲った註釈を割り込ませる、いわゆる括弧書きというものの一種に「(笑)」とのがあり、これはもともと座談会を文章に起こしたものに使われていたものであろうが、昨今はそれ以上にインターネット上の文章によく見掛ける。座談会の場合は、笑い声の代わりに用いられるこの記号は、インターネット上の文章では、私は笑って言っているのですよ、私は笑わせようとして言っているのですよ、という意味に使われる。同様のものに(涙)や(怒)がある。最近では(爆)というのもよく見掛け、これは恐らく爆笑か爆弾発言の意味であろうと思われるが、こういう記号のついている文章に限って爆笑を誘発する起爆力もなければちっとも危険な発言でもないということが多い。他に思い付くところでは(株)や(代)というのもある。
 コンピュータ上の文章では、これらと並行し、いわゆる :-) や (^_^) に代表される顔文字というものもあるが、最近では見掛けることがやや減ってきたように思う。GUI環境のアウトライン・フォントでこれら顔文字を見るとバランスが悪いので、敬遠されつつあるのだろうか。
 これから先、今以上にさまざまな局面で文章が電子化されてゆくことであろうし、そうなってくるとこの括弧付き表現も今まで以上にさまざまなものが作り出され、それらに用いられるようになってゆくだろう。
 小中学校では、パソコンで作文させる指導があるようだが、将来の小学生の作文はこんなふうになるかもしれない。

 先しゅうの日よう日、かい犬のコロを連れてさんぽに出かけました。コロはとてもうれしそうにはしゃぎ回りました(笑)。そのうち、ぼくの持っていたくさりを振りほどいてかけ出しました(わんわん)。するとそこへトラックがやってきてコロははねとばされてしまいました(爆)。あわてて近よってみるとコロは死にかけていました(ぴくぴく)。よく見るとお腹がさけて、何か出ています(肝)。ぼくはかなしくなって泣きました(涙)。ふと見るととび出た内ぞうに何かが動いています(フィラリア)。きもち悪いので走って家に帰りました(いやんいやん)。

 電子メールが、電話並みに日常化すると、古風にも恋文などというものが復活する可能性もある。面と向かって、あるいは電話では気持ちを打ち明けられない内気な男がメールにて女子の人に告白するということが増えるかもしれないのだ。

 トメ子さん。突然こんなメールをさし上げる無礼を御容赦ください。実ははじめてあなたを見たときから僕はあなたのことが頭から離れません(悩)。あなたは僕の太陽です。お付き合いしてください(祈願)。

 当然、返事だってメールである。

 お手紙拝見しました(読)。私のことをそんなに考えていただいてるなんて知りませんでした。光栄です(信長)。お気持ちは嬉しいのですが、実は先頃両親の勧めでお見合いし、結婚のお約束をしたばかりなのです(笑)。
 あなたを愛する素敵な女性が現われますことを、陰ながらお祈りしています(一応)。
 どうか、ご自愛ください。←って言ってもオナニーじゃないぞ←私をオカズにしたらぶっ殺すからな(怒)←こらこら(笑)
 かしこ(実は馬鹿ぴょーん)

 昔話の絵本なんかも、コンピュータ上で見ることになるかもしれない。

 昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました(共白髪)。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。おばあさんが洗濯をしていると川上から大きな桃が流れてきました(哲治)。お婆さんは桃を家に持って帰りました。お爺さんが包丁で桃を切ると、中から残留日本兵が出てきました(恥)。

 そうなってくれば、当然教科書なんかも電子化されるだろう。

 【例題】図の△ABCと△DEFは相似であることを証明せよ(謎)。

 【証明】
  △ABCと△DEFにおいて、
   ∠ABC=∠DEF …… (米)
   ∠BCA=∠EFD …… (肉)
  (米)と(肉)より二角相等で、△ABCと△DEFは相似である。(NHK)

 自分で書いてても、なんだかさっぱり判らない。今回はこれにて投げやりに終わり(狂)。


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1998/07/06
文責:keith中村
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