第10回 根性


 さて、前回はどこまで話したのじゃったかな。なにしろユリ・ゲラーの一日郵便局長が俄かに猫じゃ猫じゃを突き落としたもんで私のなすびはホイジンガ、そういうあなたはシュレジンガ。猫じゃ猫じゃとおっしゃいますが、猫が箱入り、ツェーマンデーマンなんてことも言うのじゃからなあ。いやはや恐れ入谷のジューシーフルーツとは将にこのこと。今度はな、パンゲアについて言うげなあ。そもパンゲアちうもんは面白いやつでなあ、わしなどは腰砕けほげほげ奉行が蹴鞠パシャ、蹴鞠アタチュルクなんかを相手にツモ、メンタンピン、わんばんこー、などと詰問していた時代からの知己じゃきに、トロピカル大魔人のスカッドミサイルなんかはトー・益男にくれてやったんじゃ。何トー・益男を知らんのか。ドイツの産んだ偉大なお任せ大名トー・益男を知らんというのか。仏典ブロオグにあったように奇兵隊を組織して、トニを呉れえ、なんて細大漏らさず河童に報告していたあのトー・益男であるぞよ。
 時代は変わったものじゃ。そんなことであるから、自爆装置付き二代目竹田出雲も嘆いておるのじゃよ。そういえばわしらの若い頃にはこんな歌が流行ったもんじゃ。
 髭面髯面お馬さん、あなたのお家はドレスデン、名前を聞いてもワルキューレ、お家を聞いたら由比ガ浜、わんわんわわん僕横順、泣あいてばかりのホメイニ師、今日も元気だ太い眉、嗚呼、それもまた人生、だばだばあ。
 何じゃと。そんな唄は知らんというのじゃな。よろしいよろしい恵比寿さん。それではこれはどうじゃな。
 ほうほうほうほうほう。そうでっかあ。したら次いきましょか。ほんでね。ほんでね。まあ、その時代に秋吉造山ちうんがあったわけですわ。ふん。ええ、君きみ。うん。そそそ、そうそうそう。君ですう。君な、ちょっとな、説明してください。うん、ふん。ふんふん。ほうほうほうほうほう。そうそうそう、そそそ。そういうことでんなあ。
 どうじゃ、判るか。ふむ、判らんのか。もう少し続けるぞ。
 ほんでね。ほんでね。君ら「日本沈没」いう小説読んだことありまっか。ふん。そうそう。日本沈没ですわ。何、読んでへんのか。誰も読んでへん。なに。あ、君読んだことあるの。ああ、君きみ。そうそうそう。君ですわ、きみ君。君な、ちょっと、説明してください。ふん。ふんふん。ほうほうほうほうほうほう。そそそそ。そうそうそう。そういうことでんなあ。そうそう。つまり。つまりですなあ。日本がですな、これが。沈没する、ち、ん、ぼ、つ、す、る、ちう話ですわ。よろしか。
 どうじゃ。判らんか。そうか。実はこれはじゃな、わしが高校の頃の地学の山本先生なんじゃ。山本先生を知っとるか。知らんか。そうか。実はな、山本先生は四頭身じゃったんじゃよ。そりゃあもう吃驚するぞ。ああ。悲しいなあ。誰も知らんのかあ。よく心得ておきなされ。歴史にはな、埋没してしまった四頭身もいるのじゃよ。歴史の表舞台に決して立てない四頭身だっているんじゃ。ああ、むごい話よのう。可哀相やのお。なあんか、この、切のうなってくるのう。ざんないのう。
 まあ、よい。この際そんなことは別にどうでもいいのじゃ。
 話を続けよう。まあ、そんなこんなで、無事にへもへもの都に到着したと思いなされ。しかし、時はまさに文明開化。あちこちで、「鬼平犯科帳」を小脇に抱えた室生犀星が「だんじりは岸和田なんじゃあ」と叫びながらロビイ活動をしておったのじゃよ。かたや尊皇攘夷派であった源氏鶏太は、最新鋭の機動スーツを身にまとって「滅私奉公」を合い言葉に不幸の手紙を書き散らしていた。この最新鋭のスーツはな、残念なことに三分しかもたないんじゃが、時間になると警告灯が知らせるようになっておってな。そう。源氏鶏太のインジケータじゃ。ほっほっほっほっほ。そして都に跋扈する悪党どもに敢然と立ち向かう実存戦士ダーザイン。しかし、ダーザインは駅前の自転車置き場から自分の自転車を出そうとした拍子に、将棋倒しに他の自転車を全部倒してしまう。そのままにしていざ出陣と思うも、向かいの弁当屋のおばちゃん推定四十三歳とお客その一推定三十八歳に見られていることに気づき、流石は正義の味方そのまま抛ってはおけぬ、一台いちだいよっこいしょよっこいしょと起こしていくうちに悪党どもは逃げてしまう。「餓えた子どもの前に正義の味方は無力なのかあ」と滂沱の涙を流しながら高菜弁当大盛を頬張るダーザイン。とにもかくにもそんな時代であったのじゃ。
 そういえば、わしが蜜柑を買った話はまだしておらんかったかのう。そうか。ふむ。では話して進ぜよう。
 あれは確か、「まろは武者小路でおじゃるよ」が全日本流行語大賞に輝いた年であったかのう。巷には宮さんブームが到来しておっての。うん。港ではないぞ。巷じゃ。歌謡曲では「私の彼はご祐筆」が流行り、映画では「ティーンウルフ3 僕の従弟も大鏡だった」に立ち見が出る人気じゃったな。男はみんな衣冠、直衣、狩衣などを身につけ、女は細長、白拍子の水干などで着飾っておったものよ。わしはな、その頃温州蜜柑が大好きでなあ。その年は奮発して段ボール一箱分買ったんじゃよ。いやあ、ありゃあ美味かった。もっとも松の内があけてしばらくたってみいんな腐らせてしまったがな。
 そうそう。わしが三色ボールペンを買った話はまだ。何。何じゃと。うん、そうじゃよ。蜜柑を買った話はどうなったじゃと。何をいうておる。だから、蜜柑を買った話をしたではないか。ふむ。そうじゃよ。それだけじゃよ。わからんことを言いなさるな。まあよろし。ところで三色ボールペンを買った話はまだしておらんかったか。え、聞かなくてもよいのか。残念な。そうか、今日はもうお帰りなさるのか。わかった。それではまたいつでも話が聞きたくなったらいらっしゃるがよい。それではな。


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1997/10/30
文責:keith中村
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